研究概要 |
本年度は水との混合溶媒のミクロ構造をX線回折、中性子小角散乱及びNMR緩和(T_1)より研究した。特に、前年度の研究で、相分離を用いる分析法で1,4-ジオキサン混合溶が媒異常性を示したで、それを明らかにするために、1,3-ジオキサン及びテトラヒドロフラン(THF)の小角散について研究した。 1.X線回折 純水に1,3-ジオキサンあるいはTHFを加えると、0.1モル分率でいずれの混合溶媒でも水の第3近傍の水和構造が消滅した。更に有機溶媒濃度が増大すると、(0.1【less than or equal】x【less than or equal】0.3)では、5Åを中心とした有機溶媒分子の相互作用に帰属されるピークが発達した。さらに有機溶媒濃度がますと、3.5〜8Åにおける幅広いピークが観測された。この濃度では有機溶媒の構造が混合溶媒中でも支配的なることを示す。このことは、1,4-ジオキサンと大きな相違はない。 2.緩和速度 D20中の緩和速度の測定の結果、いずれの溶媒でも0.3モル分率で極大を示した。しかし、極大値の値はTHF>1,3-ジオキサン>1,4-ジオキサンとなった。このことはTHFが一番強く水と相互作用することを示す。 3.中性子小角散乱 Debye相関長(L_D)はいずれの溶媒でも有機溶媒のモル分率依存性を示した。0.2〜0.4の範囲で極大を示した。しかし1,4-ジオキサンについては緩やかで0.4附近で極大を示した。これに対して、1,3ジオキサンおよびTHFの水との混合溶媒では(L_D)の値は大きく、それぞれモル分率0.4と0.3附近で極大を示した。このことよりTHFが一番水となじみにくく、水とミクロな相分離を起こしやすいことが分かった。逆に1,4-ジオキサンが水となじみやすく、ミクロな相分離を起こしにくいと考えられる。1,3-ジオキサンはその中間と考えられる。 これらの結果、水と水素結合できる有機溶媒分子中の酸素原子とその立体配置が、ミクロな相分離に大きく影響していることが明らかとなった。
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