1.個体群の縮小・孤立化による受粉パターンの変化が繁殖成功度に影響を与えていることが示唆されている異型花柱性の絶滅危惧植物サクラソウを材料とし、ポリネーターの利用性をシュミレートする人工授粉実験によって、花粉親の数および自殖の効果を検討した。北海道に自生しているサクラソウの自然個体群から複数ジェネットを採集し、環境条件の均一な栽培条件下で授粉量を制御した人工授粉によって、花粉親の数が受精・結実や次世代の生育初期の生存などの繁殖成功におよぼす影響および、ジェネット内授粉とモルフ間授粉を比較により、受精・結実、次世代の生育初期の生存および成長へ自殖の影響を検討した。その結果、和合な個体間の交配は、結実までは高い繁殖成功度をもたらすが、花粉親が1個体の場合は、花粉親の違いによる発芽率のばらつきが大きいこと、低い成功度は花粉親を複数にすることで回復がみられる場合があることが示された。また、長花柱型では部分的な自家和合性が存在するが、自殖による後代は、その後の生存や成長段階において強い近交弱勢がはたらくため、モルフ間授粉の後代に比べると繁殖成功度が著しく低いことが明らかにされた。 2.網室実験によりマルハナバチの女王がサクラソウを訪花した際の花粉の持ち越しパターンを実測した。花粉供給が長花柱花と短花柱花の場合では、受粉量や持ち越しパターンに大きな差異が認められること、訪花順の遅い花でもかなりの持ち越し花粉の授粉が期待されることが示された。 3.今年度トラマルハナバチ用に開発した発信器はやや重すぎ、自然な飛行を妨げることが示された。来年度により重量を抑えた発信器の開発が望まれる。
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