オーストラリア産アシナガバチRopalidia romandiの社会構造を分析した。巣の創設を人為的に誘導すると、ワーカーは女王を選別する行動を見せた。また、女王間の血縁度はワーカー間の血縁度より高く、周期的に女王数が減少するcyclical oligogyny仮説を支持するものと考えられた。本種ではワーカー産卵を示す証拠は見つからなかった。 日本産のコアシナガバチの繁殖虫生産を分析した結果、コロニーサイズとメス性比の間に正の相関関係が認められた。その原因として、(1)大型コロニーほど資源量が多く、その結果としてメス性比が大きくなる、(2)交尾したワーカーが繁殖することでメス性比が高くなる、の2つの要因が考えられた。 日本産のフタモンアシナガバチの社会構造を独自に開発した13種のマイクロサテライトマーカーを使い分析した。その結果、(1)本種のearly maleは2倍体であり、事実上不妊であること、(2)コロニーサイズとワーカー産卵の頻度には正の相関関係にあること、(3)コロニーサイズとワーカー由来のオスの頻度には関係が無かったことが明らかとなった。巣上で産卵が認められた個体と、その個体が産んだと考えられる卵から生まれた一令幼虫のDNAを比較した結果、ワーカーの産んだ卵のほとんどが女王と他のワーカーによって食卵されていることが明らかとなった。本種のような一回交尾・単女王のコロニーでは、一般にワーカー同士による食卵(worker policing)が進化しにくいと考えられてきた。今回の発見はそれに反するものであり、極めて新奇な発見と考えられた。
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