研究概要 |
昨年度に引き続き社会システムの異なる数種の魚類を対象として,沖縄県瀬底島および伊豆半島沿岸海域において野外調査を継続するとともに,琉球大学瀬底実験所の屋外水槽および東京学芸大学狩野研究室に設置した室内水槽で飼育実験を実施した。 1)瀬底島周辺海域における潜水調査と水槽飼育実験 ミスジリュウキュウスズメダイ・ミツボシクロスズメダイ:ミスジリュウキュウスズメダイの雄2尾同居飼育実験を継続した結果,雄から雌への逆方向性転換は起こらなかった。また,近縁のミツボシクロスズメダイの繁殖行動を野外調査した結果,雌はしばしば配偶相手を変えており,大きな雄ほど繁殖成功が大きくなるという傾向はみられず,性転換しないことが説明できた。 クマノミ類:雌2尾の水槽同居飼育実験を継続したが,瀬底実験所の工事のために実験を中断せざるをえず,その時点では,雌から雄への逆方向性転換は起こっていなかった。 ツマジロモンガラ:野外において一夫多妻の雄を除去する実験を行った結果,繁殖を経験した雌が独身になったのち,雄の体色に変化し,繁殖期末に採集して生殖腺を検査したところ,活発に精子形成をしていることが確認できた。これはモンガラカワハギ科を含むフグ目における性転換の初めての、確認例であるが,一夫多妻の配偶システムにおいては雌性先熟の性転換が進化しやすいというこれまでの理論の予測通りの結果となった。 2)伊豆半島周辺における野外調査と水槽飼育実験 クモハゼ:昨年度に引き続き,野外マーク個体の追跡と水槽飼育実験を行った。雄は小さいときはスニーキングによる繁殖を試み,中くらいになると成長に投資し,大型になるとネストを防衛して雌の訪問を待ち卵保護をするという生活史をおくっており,性転換はしないことが確認された。
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