研究概要 |
社会システムの異なるいくつかの魚類(ベラ科,キンチャクダイ科,スズメダイ科,モンガラカワハギ科,ハゼ科)を材料として,沖縄県瀬底島周辺のサンゴ礁海域および伊豆半島沿岸海域において野外調査を実施するとともに,琉球大学瀬底実験所の屋外水槽および東京学芸大学狩野研究室に設置した室内水槽で飼育実験を実施し,社会システムと性配分様式との対応関係を検討した結果,以下のことが明らかになった。 1.一夫一妻で雄から雌への性転換(雄性先熟)をすることが知られているクマノミ類について,雌どうしの同居実験を行ったが,劣位雌が雄に逆戻り性転換をするか否かの結論は出せず,今後の課題として残された。 2.ハレム型一夫多妻で小型雄に繁殖機会のないホンソメワケベラとアカハラヤッコにおいては,雌から雄への性転換(雌性先熟)をすることが知られていたが,配偶者を失ってより大きな雄と出会った際には,社会的地位の変化(優位→劣位)に応じて,雄から雌へ逆戻り性転換をすることを初めて確認した。 3.ハレム型一夫多妻であるがこれまで性転換することが報告されていなかつたツマジロモンガラにおいて,野外における雄除去実験によって,雌性先熟を初めて確認した。本種において小型雄にも繁殖機会があるかどうか,また逆戻り性転換をするかどうかは今後の課題である。 4.なわばり訪問+ハレム型一夫多妻で雌性先熟であることが知られているカザリキュウセン,ウミタケハゼ,ミスジリュウキュウスズメダイにおいては,小型雄にも繁殖の機会があり,雄から雌への逆戻り性転換はしないことが確認された。 5.なわばり訪問型複婚であるクモハゼとミツボシクロスズメダイにおいては,雄の体サイズと繁殖成功の相関はなく,性転換をしないと判定された。
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