研究概要 |
シロイヌナズナのシスタチオニンγ-シンターゼ(CGS)遺伝子は563アミノ酸のORFを持ち,この内の183アミノ酸が第1エキソンによってコードされている.高等植物のCGSのアミノ酸配列を比較すると,第2エキソン以下のアミノ酸配列の相同性が高いのに対して,第1エキソンの部分は長さも異なり,相同性は低い.しかしながら,mto1変異部位を含む35アミノ酸の領域(「MTO1領域」と呼ぶ)は極めて良く保存されており,この領域が制御を担っていると期待される. 第1エキソン部分について,N-末端側からと,C-末端側からの欠失変異を作製し,読み枠を合わせてβ-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子につなぎ,CaMV35Sプロモーターの制御下においた.得られたDNAを野生型のシロイヌナズナカルスから調製したプロトプラストに電気穿孔法で遺伝子導入し,一過的発現でのレポーター活性をメチオニン添加の有無で比較した.その結果,MTO1領域を持っている場合にはメチオニン添加に応答してGUS活性の低下がみられたが,MTO1領域のN-末端側のみ,あるいはC-末端側のみを持つ場合にはメチオニン添加に対する応答は見られなかった.一方,MTO1領域を持っていても,mto1-1変異を導入したDNAの場合はメチオニン添加によるGUS活性の低下はみられなかった.このことは,MTO1領域がメチオニン添加に応答したCGS遺伝子発現制御のための必要十分な遺伝情報を持っていることを示している. さらに,MTO1領域を持つがそのN-末端,C-末端の両側に欠失を持つものについて同様の実験を行ったところ,mto1-1変異を持つ場合はメチオニン添加に応答しなかったが,野生型の場合はメチオニン添加に応答した.ただし,この場合は応答の程度がMTO1領域の両側を持つ場合に比べて弱くなっていた.従って,MTO1領域の両側の領域は,この制御の反応を助ける機能があるものと考えられる.おそらくはスペーサーとしての機能を持つものと考えられる.
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