研究概要 |
研究計画に従って,以下の研究を行った。 1.既知の酵素成分の核様体における同定 エンドウの葉緑体核様体の主要構成成分である70kDaタンパク質が亜硫酸還元酵素(SiR)であることを証明したが,様々な理由から核様体が生理的な亜硫酸還元の場であるとは考えにくい。ヒメツリガネコケから,ファージタイプRNAポリメラーゼをコードする2個の全長cDNAを取得し,それぞれがコードするタンパク質をRpoT1(1,040残基),RpoT2(1,030残基)とした。GFP融合タンパク質を用いた実験から,RpoT1はミトコンドリアに局在すると推定されるが,RpoT2に関してはさらに実験が必要である。 2.In vitro転写系を用いた核様体構成成分の機能解析 エンドウ核様体in vitro転写系の基本的性質は,報告されているタバコのものに類似していたが,低濃度のヘパリン添加により,3〜5倍に転写活性が増大することが違っていた。ヘパリン処理により転写活性は可溶化された。このとき,上述のSiRは可溶画分に検出された。核様体の高次構造パッキングが,ヘパリンによりゆるめられ,SiRにより強められ,この結果,転写活性がそれぞれ増大・抑制されると考えられる。 3.核様体の比較生化学的分析 紅藻類の葉緑体ゲノムにコードされるHU類似タンパク質について,免疫ブロット法により,細胞でこのタンパク質が大量に存在することを明らかにした。さらに,かずさDNA研究所が公開しているESTを利用して,これに類似のタンパク質をコードするクラミドモナスのcDNAを取得した。シロイヌナズナのゲノムには,HU類似タンパク質をコードするものはなく,藻類と植物ではHUに関して異なっていることが判明した。
|