積物の星青、ひいては地球上のほとんどの生物の生育は光合成のエネルギーに依存しており、光合成の研究はは、基礎研究の面からも、農学的、環境学的観点からも、盛んに行われてきた。そして、今までの研究により、光合成の基本構成要素はほぼ同定されたといってもよい。また、研究の基盤となるゲノム情報に関してもシロイヌナズナではすでに全塩基配列が決定された。ところが、植物が実際に自然界で生存し続けてゆくために重要な、環境に変化に応じた光合成の調節機構に関しては、まだ、ほとんど知見が得られていないのが現状である。自然界では、実験室内のように環境が一定しているわけではなく、刻々と変動する環境に順化・応答できなければ植物は枯死するしかない。本研究においては、環境変動のうち植物にとって特に重要な温度と光に着目し、低温感受性植物の低温傷害を、特殊な条件下における光阻害としてとらえ直し、従来、植物の低温傷害の特徴としてあげられていた、閾温度の存在、不可逆性、常温に戻ってからの可視障害の進行、の3つのすべてが、光化学系Iの光阻害によって説明できることが明らかとなった。また、このような生理学的な現象の背後にある分子メカニズムを解明するために同時並行で行った遺伝学的な研究においては、シロイヌナズナから、二次元蛍光画像解析システムを用いることにより、通常の生育条件においては野生型と見分けがつかないが、低温にさらされると明確に異常を示す変異株を単離することができた。今後の低温傷害の研究において、このような変異株の解析がきわめて重要な意味を持つと考えている。
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