当初の計画に従い、高等植物の細胞膜、葉緑体包膜、チラコイド膜に対する高温処理の影響を調べた。その結果、ホウレンソウでは細胞膜は約53度、葉緑体胞膜では約50度、チラコイド膜では約48度で、不可逆的で低分子量物質に対する透過性増大を伴う膜構造の大きな変化が起こることが分かった。しかし、チラコイド膜では、約35度というより低い温度で、一部可逆的で、低分子量のイオンに対する透過性の増大が起こることも分かった。チラコイド膜の流動性をコレステロールを用いて変化させたところ、酸素発生活性の失活とこの比較的低温でのチラコイド膜のイオン透過性増大は対応関係にあることが分かった。 光化学系Iの回りの環状電子伝達系で、高温により活性化される電子伝達成分は種々の阻害剤を用いた実験の結果、フラビン酵素であることが分かった。欠失突然変異体を用いた実験の結果も合わせて、この成分はNAD(P)H酸化還元酵素ではないことが証明できた。 最も熱に弱い反応の1つであり、それが高温で解離することを示した、光合成酸素発生反応に必要な33KDaタンパク質のクローニングにも成功し、現在ベクターの作成に着手している。
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