平成13年度は2つの面で成果があった。1つは温度順化に伴い高温耐性がどの様に変化するのか、さらにその耐性変化とチラコイド膜の高温による半透性喪失の温度依存性変化との関連を示したことである。材料としてはコムギ及びシロイヌナズナを用い、15、25、35℃で栽培した植物生葉の高温耐性の比較を行った。半透性の変化はチラコイドでの光照射による膜電位形成と消失過程をカロチノイドのエレクトロクロミックシフトにより調べた。結果は半透性喪失と酸素発生活性の失活は栽培温度によらず一致し、我々の「半透性喪失によるチラコイドルーメンのイオン組成の変化が酸素発生に必要なマンガンクラスターを保護している33kDaタンパク質の遊離を引き起こす」という仮説を支持した。 2つ目の成果はラン藻において、光化学系II(PSII)複合体の構成成分の一つ、CP47タンパク質にHisタグを付けた突然変異体を用いて得られたものである。Hisタグにより、簡便に、かつ効率よくPSII反応中心複合体を単離精製できるので、15、25、35℃で培養した突然変異体からチラコイド膜、PSII反応中心複合体を調製し、PSII活性の温度感受性の比較を行った。その結果、チラコイド膜では培養温度によりPSII活性の高温感受性に差があったが、精製したPSII反応中心複合体では培養温度による差がなくなることが明らかとなった。現在、培養温度が異なる細胞由来のチラコイド膜から脂質を抽出し、それを用いてリポゾームを形成させ、そこに埋め込んだPSII反応中心複合体の活性を比較中である。
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