本研究では、哺乳類のみならず魚類や両生類を用いて排卵における卵胞壁溶解機構の解明を目指すことを目的とした。 (1)哺乳類卵巣内ブラジキニン産生系の発見とその生理的意義 哺乳類の排卵にブラジキニンが関与することは知られている。研究代表者らは、昨年度に哺乳類卵巣にブラジキニン産生系が存在することを明らかにした。本年度では、ブタ卵巣を材料としてブラジキニンB2受容体が全ての卵胞の莢膜細胞および顆粒膜細胞に発現しており、ブラジキニン処理したブタ卵巣顆粒膜細胞ではマトリックスメタロプロテアーゼ-20(MMP-20)遺伝子の発現が顕著に誘導されることを実証した。 (2)哺乳類卵巣に発現する新規マトリックスメタロプロテアーゼの発見 研究代表者らが卵巣特異的に発現する新規マトリックスメタロプロテアーゼ(現在はMMP-23と呼ばれている)を発見したことはすでに報告している。本年度の研究では、この新規酵素は排卵過程ではなく、卵胞の成長過程で重要な役割を果たしている可能性があることを明らかにした。 (3)メダカを用いた排卵酵素の探索研究 メダカ卵巣に発現するマトリックスメタロプロテアーゼ8種のcDNAクローニングと解析を行った。試験管内排卵実験系を用いて排卵実行酵素の探索を試みた結果、MT2-MMP(膜結合性マトリックスメタロプロテアーゼ)が排卵過程で主役的な役割を果たしていることを見出した。 従来のように哺乳類を材料にすることにはとらわれず、メダカという優れた実験動物に目を向けたことが、排卵マトリックスメタロプロテアーゼ候補をあぶり出すことができた大きな理由である。
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