本研究では、高温点欠陥検出法として、水素・点欠陥複合体の光吸収スペクトル測定法を提案している。そこで、まず水素・点欠陥複合体を形成している水素の振動による光吸収線のピーク位置から、点欠陥の種類を決定する手法を確立するために、各種の不純物をドープしたシリコン単結晶に水素をドープして室温で電子線照射し、それらの光吸収を測定した。その結果、自己格子間原子1個と水素原子2個とを含む複合体が1987&1990cm^<-1>、原子空孔1個と水素原子2個及び水素原子4個を含む複合体がそれぞれ2122cm^<-1>及び2223cm^<-1>に光吸収ピークを持つことを見いだした。点欠陥の種類は、光吸収ピーク強度に対するあらかじめドープしてあった不純物の効果から決定した。また複合体に含まれる水素原子の数は水素、重水素同時ドープによる光吸収ピークの分裂から決定した。 次に、自己格子間原子濃度が高いと言われている炭素ドープシリコン結晶を、水素雰囲気中で高温熱処理後急冷し光吸収を測定した。水素・自己格子間原子複合体による1987&1990cm^<-1>ピークが観測されることを予想していたが、それに反して水素・原子空孔複合体による2223cm^<-1>ピークが観測された。この結果は従来信じられ、各種の実験結果解析に用いられてきた「自己格子間原子濃度と原子空孔濃度の積が不純物濃度に依存せず一定である」という仮説を否定する重要な結果である。そしてこの試料中の原子空孔形成エネルギーが約3eVと決定された。
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