研究概要 |
本年度は以下の実績を得た。 1.タングステン薄膜の低抵抗率化 昨年度作製したInP基板上へのタングステン薄膜の抵抗率がバルク値の約30倍となった為その改善を試みた。当初期待されていたE-gunによる高温蒸着による方法ではInPの表面状態が悪化しない温度範囲では改善されなかったが、スパッタによる成膜が有効であることを確認し、成膜時の圧力、膜厚に抵抗率が大きく依存することが解った。圧力3mTorr、膜厚200nmにおいてバルク値の6倍まで低抵抗率化に成功した。 2.高アスペクト比を持つタングステン細線の形成とそのInPによる埋め込み成長 高アスペクト比パターンの為に、タングステン薄膜のリアクティブイオンエッチング(RIE)による加工を試み、マスクとしてSiO_2とTiの多層構造を用いることでRIE時の垂直なエッチング側面とエッチング後のマスク削除を可能とした。その結果幅100nmのタングステン細線形成を可能にし、アスペクト比約1の細線形状を得ることが可能となった。さらにこのタングステン細線上にInP層を成長することをMOVPEで試み、タングステン細線上に200nm程度のInP層をラテラル成長し、平坦なヘテロ界面が形成しうることを示した。 3.埋め込まれた金属をショットキーコレクタとするサブミクロンヘテロ接合バイポーラトランジスタ 以上の1,2の結果を基にInP MOVPEでタングステン細線を埋め込んだ後にヘテロ接合バイポーラトランジスタ用構造を形成し、トランジスタとして動作させることで、金属上にラテラル成長した化合物半導体の評価を行った。その結果、エミッタ幅が500nmで、エミッタ幅の下に幅100nm、高さ100nm、周期200nmのタングステン細線3本がコレクタとして働くトランジスタにおいて10以上の電流利得を観測し、良好な結晶性を確認した。
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