本年度は以下の実績を得た。 埋め込まれた金属をショットキーコレクタとするサブミクロンヘテロ接合バイポーラトランジスタの界面電気的特性の評価 InP MOVPEで埋め込んだタングステン細線をコレクタとして用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタの高周波特性の解析から、界面近傍の電気的評価を行った。その結果、埋め込み成長温度によって、金属細線近傍の電気的特性が変わることが明らかになった。埋込み成長温度585℃の場合、埋められた金属細線の周囲に形成される導電性領域の幅は0.25μmに相当する。一方、埋め込み成長温度600℃の場合、導電性領域の幅は1μmに広がる。広い底面にはキャリアを生成する損傷がないことと導電性の層の幅が成長温度に依存し変化することから考えると、タングステンワイヤから不純物が拡散してキャリアを生成していると考えることが妥当であり、今後タングステンの純度の向上、埋め込み成長前の表面処理、埋め込み成長温度のさらなる低下等低減できると考える。 金属細線をゲートとする新たなトランジスタ作製 二重障壁構造と埋込み金属細線を組みあわせることで、走行するキャリヤがホットエレクトロンとなり、アンドープ層のみを走行する新しいトランジスタ構造を作製した。半絶縁性基板を用いると共に、半導体層をエッチングすることによりフリースタンディングワイヤーで埋め込まれたゲート金属と電極用パッド間の配線することで、以前の素子で問題となっていたエミッターゲート間のリーク電流の低減をはかった。電圧-電流特性から、埋め込んだ金属細線のゲートによって引力ポテンシャルが形成できることが確認でき、またエミッターゲート間とエミッターコレクタ間の両方で測定される微分負性抵抗のピーク電流値がほぼ同じであることから、ゲートーエミッタ間のリークが除去できたことをも示し、この素子の将来性を示せた。
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