研究概要 |
本年度は,高融点金属をマスクに用いてGaNの選択成長を行い,欠陥の低減を目指して,以下の実験を行った。 (1)金属埋込みに関する基礎的プロセスの検討: マスク材料として,タングステン(W)を選択した。電子ビーム蒸着法によりGaN上へWを堆積する条件を最適化した。WをマスクにMOVPE法により選択成長を行った結果,Wマスクが良好な選択性を有していることが明らかとなったが,成長中にマスク剥離やマスク下部のGaNの分解という現象が生じることがあった。これは,Wが触媒として作用して水素のラジカルを生じさせ,これによりGaNの分解が促進されたと考えられる。また,このWの触媒作用による分解は,Wをアンモニア雰囲気中で窒化してWN_xを形成すると,抑制されることがわかった。さらに,AlGaNを最表面とする下地基板を用いた場合には,触媒作用による分解はほとんど認められなかった。 (2)埋込み金属材料の選定と埋込み機構,マスク形状の検討: 下地結晶としてAl_<0.1>Ga_<0.9>N/GaN/サファイアを用い,窓とマスクが共に2μmのストライプパターンのWマスク形成した。まずWの窒化によりWN_xを形成し,300Torr,950℃で30分と1050℃で90分との2段階でELOを行うことにより,WN_x埋込む多層膜を得た。埋込みは良好で表面は極めて平坦であった。AFM(原子間力顕微鏡)観察の結果,成長様式はステップ・フローで進行していることが確認できた。さらに,そのステップに乱れはほとんど認められず,転位密度が非常に低いことが示唆された。X線ロックングカーブをストライプと平行にX線を入射した場合と垂直に入射した場合で測定した結果,FWHMは共に200arcsec台の前半で結晶のc軸揺らぎが小さいことがわかった。
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