研究概要 |
本年度は,高融点金属のタングステンをマスクに用いてGaNの選択横方向成長(ELO)を行い,そのプロセスの最適化を目指して,以下の実験を行った。 (1)表面反応の検討とその制御 タングステン(W)は、500℃以上で水素によるGaNの分解を促進する触媒作用を有していた。このWの触媒作用による分解は,Wをアンモニア雰囲気中で熱処理してWを窒化すると,抑制されることがわかった。X線光電子分光法(XPS)による分析の結果,窒化温度750℃以上の場合,約40nmのW膜はほぼ一様に窒化され,WN_xが形成されていた。GaN結晶上に数10nm程度AlGaNを成長行った結晶を選択成長用基板として用いた場合,1000-1100℃の成長温度においても,触媒作用による分解はほとんど認められなかった。 (2)横方向成長促進による転位の低減とその機構の検討 Wの触媒作用によるGaNの分解を利用した橋脚構造を目指して,触媒・分解作用の制御を試みた。Wの製膜温度の低下と薄膜化,およびELOで窒素と水素を混合したキャリアガスの使用,成長温度の最適化により,Wマスクにピン・ホールが発生し,マスク下のGaNを分解した橋脚構造が作製できた。 Al_<0.1>Ga_<0.9>N/GaN/サファイアを下地結晶に,窓とマスクが共に2μmのストライプパターンのWマスクを用いたELOでは,窒化プロセスを行い,WN_x埋込む多層膜を得た。AFM(原子間力顕微鏡)観察の結果,ステップに乱れはほとんど認められず,転位密度が非常に低いことが示唆された。X線ロックングカーブ測定においても,(0004)回折のFWHMが200arcsec台の前半で,結晶のc軸揺らぎが小さいことがわかった。
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