1.高温超高真空STM・イオン銃複合装置の改良 イオンの質量分離のためにE×Bセパレータを取り付け、特定のイオン種のみの照射が可能となった。また、電子衝撃によるSTM探針清浄化の際に直線導入機およびベローズニップルによって探針先端とフィラメントの距離を調整できるように改良し、実験の効率が向上した。 2.Arイオン照射によるSi表面の改質効果解明の推進 高温STM観察中のSi表面にArイオンを照射し、出現した欠陥の動的過程を長時間にわたり実時間その場観察を行うことに成功した。また、欠陥の動的過程の温度依存性を調べることにも成功し、温度が高いほど一旦拡大する欠陥がより多くなること、回復する欠陥の割合が高くなることが示された。現在、イオン照射欠陥回復過程の入射イオンのエネルギー依存性、イオン種依存性を調べており、平成11年度中に成果が得られる予定である。 STMの実験と合わせて、計算機実験も押し進めた。欠陥の形成・回復の素過程を理解するために、イオン注入されたSi結晶中の個々の原子の動きを分子動力学(MD)によりシミュレートする技術を開発した。加えて、SiO_2/Si界面構造の大規模MDシミュレーションも行った。 3.Si表面構造自己組織化の解析 平成12年度研究計画「酸素イオンがSi表面構造の自己組織化に及ぼす影響の解明」のための基礎的研究として、Si表面構造の形成・消滅過程および構造領域の時間発展を詳細に調べ、Si表面構造の自己組織化に関して多くの知見が得られた。
|