研究概要 |
1.イオン照射によるSi表面の改質効果解明の推進 昨年度実績としての高温超高真空STM/低速イオン銃複合装置を用いて、Arイオンを照射したSi表面をリアルタイムで高温STM観察し、1個のArイオンによって形成された表面改質サイトの形状変化を多数調べた。その結果、サイズの大きいイオン照射痕の多くは、熱処理によって表面のダイマー列に沿った辺を持つ正六角形に整形されることなどが明らかになった。また、昨年度導入したE×Bセパレータにより、Si表面へ一価の酸素イオン(O^+)のみを抽出して高温STM観察することに成功した。この結果、活性な酸素イオンの照射時においても、Si表面を原子レベルで観察し続けられることを確認した。 2.Si表面へのイオン照射過程のシミュレーション技術の構築 STMによって得られたイオン照射欠陥の挙動を定量的に解釈するためには、バルク中の原子や空孔の挙動の理解が不可欠である。このため、Ar,Si,Oの3元素が扱えるポテンシャルを開発し、イオン照射後の欠陥の挙動やSiO_2/Si界面構造形成の動的過程のシミュレーションを行った。また、分子動力学計算では扱いきれない長時間に及ぶ欠陥の挙動をシミュレートするために、モンテカルロ法によるシミュレータの開発も行った。 3.金属イオン発生装置の導入 従来は気体から生成したイオンのみ照射可能であった高温超高真空STM/低速イオン銃複合装置に、金属イオン発生装置を導入した。これにより、半導体表面へP(隣)やB(硼素)などのドーパント原子を照射することが可能となった。
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