研究概要 |
面発光半導体レーザの発振偏光の双安定性の起源、および双安定性を用いた全光型信号処理、さらに、スピン偏極電子の半導体への注入に関する研究を行い、以下の点について成果を得た。 1.面発光半導体レーザの発振偏光の双安定性の起源 正方形の導波路構造をもつ面発光半導体レーザに存在する、偏光が直交する2つの固有モード間の双安定性について理論的に検討した。バルク活性層、多重量子井戸構造(MQW)活性層のどちらにおいても双安定性が存在し、圧縮歪をもつMQW活性層をもつ半導体レーザでは顕著になることがわかった。面発光半導体レーザでは、2つの固有モードに対し線形利得が等しいので、偏光双安定性を得るためには理想的な構造といえる。 2.全光型3R中継 面発光半導体レーザの偏光双安定性を利用した、全光型3R(Retiming,Reshaping,and Regenerating)を提案し、理論解析した。10Gbit/s,パルス幅25psの入力信号を用いた場合、約17dBの増幅度をもつ波形再生・増幅が実現されることがわかった。信号光の強度が弱く、クロック信号の強度が強い程、強度ゆらぎと時間ジッターが低減されるが、ON/OFF比が低下することがわかった。 3.スピン偏極電子注入発光ダイオードの作製 強磁性体電極によりスピン偏極した電子を活性層(p-InGaAs)に注入し、発光の偏光を制御することを目指した発光ダイオードを作製した。n側電極として、Co_<0.75>Cr_<0.25>薄膜をスパッタで成膜し、垂直磁化膜を作製した。しかし、この発光ダイオードにおいても発光が無偏光であることが分かった。同じ半導体構造を用い、光励起したスピン偏極電子のスピン偏極度は輸送後もかなり保持されていることが、我々のこれまでの実験結果からわかっており、GaAs/CoCr界面でスピン偏極が緩和されているものと推測される。
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