研究概要 |
面発光半導体レーザの発振偏光の双安定性の起源、および双安定性を用いた全光型信号処理、さらに、スピン偏極電子の半導体中での緩和及び半導体への注入に関する研究を行い、以下の点について成果を得た。 (1)正方形の導波路構造をもつ面発光半導体レーザに存在する、偏光が直交する2つの固有モード間の双安定性について理論検討した。バルク活性層、多重量子井戸構造(MQW)活性層のどちらにおいても双安定性が存在し、圧縮歪をもつMQW活性層をもつ半導体レーザでは顕著になることがわかった。面発光半導体レーザでは、2つの固有モードに対し線形利得が等しく偏光双安定性を得るためには理想的な構造といえる。 (2)面発光半導体レーザの偏光双安定性を利用した、ビット長変換機能を持つ全光型DEMUX動作、全光型のRZ-NRZ、NRZ-RZ変換を実験的に確認した。又、全光型3R(Retiming, Reshaping, and Regenerating)を提案し、理論解析した。 (3)スピン偏極電子の伝導に関する研究を行うため、Al_<0.1>Ga_<0.9>As層を持つInGaAs/GaAs量子井戸を作製した。量子井戸の発光のスピン緩和を測定した結果、スピン偏極電子がp-n接合やヘテロ接合を通して輸送されても、スピン偏極はかなり保存されることがわかった。 (4)強磁性体電極によりスピン偏極した電子を活性層に注入し、発光の偏光を制御することを目指した発光ダイオードを作製した。n側電極として、Co_<0.75>Cr_<0.25>薄膜をスパッタで成膜し、垂直磁化膜を作製した。この発光ダイオードの発光は無偏光であった。同じ半導体構造中で、光励起したスピン偏極電子のスピン偏極度は輸送後もかなり保持されていることから、GaAs/CoCr界面でスピン偏極が緩和されているものと推測される。
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