本年度(初年度)は、原理確認と実験の準備のための基礎検討を中心として以下の研究を実施した。 1.基礎原理の実験的検証 (1)非平面3次元光路を持つ立体干渉計を構築し、微細3次元構造を持つ物体に円偏光を入射させ、物体表面の局所的勾配に応じた波動ベクトルの向き(光子スピン方向)の変化に伴う光子スピン方転位相が出現することを実験的に確認した。 (2)傾いた鏡面物体を回転させて光子スピン方転位相を測定することにより、物体の局所的勾配と光子スピン方転位相の量的関係を把握し予測値とほぼ一致することを確認した。 (3)直線偏光の偏光面の回転角をアナライザーで直接測定し光子スピン方転位相が偏光面の回転により導入されることを確認した。 2.光学系の中の屈折・反射による光子スピン方向転換や偏光状態の変化を追跡しベリー位相を定量評価するための計算モデルとシミュレーションコードの開発幾何光学的光線に基づくモデルと回折を考慮したモデルを併用し、計算効率の高いシミュレーションコードを開発した。 3.物体表面の勾配情報を与える2次元スピン方転位相像と物体表面までの距離情報を与える動的位相像を分離して精密検出する偏光ヘテロダイン干渉技術の開発干渉縞から検出される位相は動的位相と光子スピン方転位相の重量したものとなる。光子スピン方転位相は円偏光に対して生じることに着目し、入射光の偏光状態を制御してこれらを分離する技術を確立した。
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