電子線ホログラフィー利用した、各種先端材料に対する精密形態評価法の開発を行った。 まず、ホログラフィー実験システムのハードウエア開発として、加熱冷陰極型電子銃を備えた透過電子顕微鏡に0.6μmの白金ワイヤを導入してバイプリズム系を構築した。更に、高感度TVカメラを導入して、ホログラムを高精度かつ定量的に記録できるシステムを立ち上げた。 ホログラムの精密解析のためのソフトウエアは以下の通り構築した。ホログラム解析用の専用コンピュータを活用して、ディジタル画像として得られたホログラムから位相の情報を抽出するプログラムを作成した。このプログラムは高速フーリエ変換を利用したもので、演算効率に優れ、汎用性の高いものである。また、ホログラムの観察に対しては、電子顕微鏡のレンズ系の操作を通して、最も鮮明度の高い干渉縞を得る実験条件も確立している。 上記の手法を用いて、先端材料の精密形態評価を実施している。例えば、形態制御されたSiO_2粒子を用いて、従来厚さ測定に広く利用されてきた電子エネルギー損失分光法(EELS)と、ホログラフィーによる厚さ測定との比較検討を行った。その結果、EELSでは30nm程度以下の厚さ測定は難しくなるのに対し、ホログラフィーでは10nm以下の厚さに対しても測定可能であることを明らかにしている。また本研究では、SiO_2粒子のような絶縁体資料の観察でしばしば問題となる帯電現象の解析も行い、ホログラムのコンピュータシミュレーションと実験データの比較(残差因子の評価)により、帯電量を精度良く決定できる手法を開発した。 電子線ホログラフィーの実験は、従来、冷陰極型電子銃を備えた電子顕微鏡や、像再生のための大がかりな光学システムを必要とし、評価の対象は制約されてきた。本研究において、ディジタル画像解析法やレンズ系等の操作により、電子線ホログラフィーが各種先端材料の精密形態評価に極めて有効であることが示され、研究の目的は十分に達成できたと言える。
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