研究概要 |
本研究では、マイクロ成形プロセスのための基礎的な実験的・理論的検討を行い、これにより構築するマイクロ塑性構成則によるマイクロ成形シミュレータの開発を目指す。本年度得られた成果を下記に示す。(1)平成12年度でのせん断変形時の二次効果が材料の潜在的な効果によるものであるとの仮定を、転位密度を考慮した粘塑性構成式に導入し,材料内部の転位構造と内部状態変数とを関連付けた,二次効果を表現できる新しい構成則を開発した。そして、軸応力を重畳した状態で繰返しせん断変形を行う,いわゆる二軸ラチェット変形解析を転位密度構成則を用いて行い,構成則で二軸ラチェット変形が解析可能であることを示した.(2)本研究で対象としているマイクロファクトリーで取り扱う被加工材は数ミリ以下と微小であることから,材料内部の構造変化の影響を大きく受ける.このため,より詳細な材料内部構造変化と二次効果との関連性を検討した.そのために,単純せん断時と純粋せん断時における集合組織と交差すべりが二次変形にどのような影響を与えるかを,超音波速度変化を測定することにより検討した.これにより,単純せん断と純粋せん断では,集合組織に大きな差が認められないこと,一方,交差すべりには両者間で差が認められた.(3)有限要素多結晶モデルにより上記(2)で行った単純せん断および純粋せん断時の極点図を求め,上記(2)で得られた超音波速度変化から求めた極点図と比較検討し,超音波で定めた極点図の妥当性を検証した.(4)上記(2)および(3)で明らかにしたせん断変形時の交差すべりや集合組織変化などの内部構造変化を転位密度構成則への組み込み,マイクロファクトリーで取り扱う微小材料の成型を統一的にシミュレーションするための手法の検討を行い,実際に応用するために残された課題を明確にした.
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