研究課題/領域番号 |
11450048
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
木村 雄二 工学院大学, 工学部, 教授 (90107160)
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研究分担者 |
藤原 幸男 工学院大学, 工学部, 助教授 (80100361)
鷹野 一朗 工学院大学, 工学部, 助教授 (70226801)
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キーワード | CVD,IMコーティング / 耐食性 / 電気化学AFMその場観察 / 腐食挙動 / 電気化学測定 / CPCD法 / 欠陥存在率 / 密着性 |
研究概要 |
薄膜材料を蒸着するのと同時に加速されたN^+、Ar^+などのイオンを打込み界面部分にミキシング層を形成することにより基材との密着性の改善を可能にするイオンミキシング(IM)手法を用いて、TiNならびにTiO_2などの環境機能性を付与する薄膜を作製するのに際しての、最適なイオン打ち込みエネルギーなどの下地処理条件ならびに薄膜作製の最適条件を模索し、耐環境性機能の改善に向けたセラミックコーティング・システムを構築することを意図し、下記の項目の検討を行った。 1.SUS304鋼基材上にイオンミキシング法によりN^+イオンの打ち込みを行い、基材表面にCr窒化物層を形成させ、基材の著しい耐食性改善をもたらす蒸着速度、バイアス電圧などIM装置により基材処理するに際して最適な条件を把握した。 2.SEM,XRD,ESCAによる検討から、基材表面改質層の微細構造が成膜条研の変化に著しく依存することを明らかにした。 3.H_2SO_4ならびにKSCNを含む水溶液中での臨界不動態化電流密度(CPCD)の測定結果から、表面改質層に存在する欠陥の存在状態を求め、得られた欠陥率と1N-H_2SO_4ならびに3%NaCl水溶液中における通常の分極測定より決定した孔食電位などの電気化学的な特性値(腐食抵抗性)との対応関係を明らかにした。 4.SUS304鋼基材上にCVDならびにIM法により厚さ数μmのTiN薄膜を種々の成膜条件下で作製し、スクラッチテスターを用いたスクラッチ試験から臨界荷重Lc値を求め、皮膜の密着強度の成膜手法・成膜条件に対する依存性を明らかにした。 5.密封型環境電気化学セルを装着した原子間力顕微鏡(AFM)を用いた液中その場観察から、CVDならびにIM法により作製したTiN薄膜が腐食劣化していく過程の詳細を明らかにし、これに対して皮膜/基材界面の密着状態がどのように関与するのかについて検討した。さらに、その際に、イオンの打ち込みによる基材金属表面改質の実現ならびに界面ミキシング層の形成による基材との密着性の向上が皮膜の環境機能性の改善に対して大きな役割を果たすことを示した。 以上、イオンミキシング(IM)法により作製されたセラミック薄膜により付与される耐食性などの種々の環境機能が劣化するミクロ・ナノオーダーでの劣化過程を明らかにし、これらの特性と基材表面改質層の形成ならびに皮膜/基材界面の密着性を含む欠陥の分布状態との相関性を把握した。これらを通じて、N^+、Ar^+などのイオンを打ち込むことによる基材金属表面の改質の実現ならびにミキシング層の形成による界面構造の最適化が環境機能性改善に対する貢献の程度を明らかにした。
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