本年度は2年計画の2年目にあたる。昨年度後半から本年度にかけて、斜角入射縦波の音速(伝播時間)と伝播方向(入射方向)の関係を実験的に求め、その結果を第4回音弾性応用計測研究会(日本非破壊検査協会、平成12年5月5日)で発表した(鋼圧延板試料)。但しこの測定結果ではまだバラツキが十分には抑えられておらず、伝播方向を表すθ(入射角)、φ(伝播面方向角)の内、θ依存性の整理結果が信頼性の乏しいものとなった。 本研究では、組織異方性の一般的な特徴を実験的に明らかにし、その結果を残留応力の非破壊測定に利用することを意図しており、音速のθ、φ依存性から組織異方性パラメータを求めることが基本的に重要となる。そのため、本年度は、実験方法を見直し、厚さの異なる3種類の鋼圧延板試料について、あらためて音速異方性の測定を行った。得られた結果は、バラツキが少なく再現性の十分なものであり、試料の組織異方性の違いを明瞭に示している。 この測定結果については、組織異方性を一般の弱い直交異方性とする理論関係で整理を終えており、現在、組織異方性が理論的に予想されている特徴を有するかどうかの最終的な検討を行っている。
|