研究概要 |
本研究の目的はマイクロアイスの生成法の確立と,加工への応用である.最初にマイクロアイスジェットの発生方法とその装置を開発した.その結果,超純水と液体窒素とを同時に噴霧し,超純水ミストを凍結させることに成功した.このときの超純水粒子の生成量と凍結時間,完全凍結するに必要な冷却管の長さ,空気温度,空気圧力,空気量の関係について検討した.最初に純水の噴霧ノズルから噴霧される水粒子の粒子径を測定するとともに,PIVにより噴霧速度,パターンを測定した.その結果,平均粒径70μmで噴霧速度はノズル近傍で約50m/s程度で,噴霧後すぐ減速することがわかった.またその水粒子が凍結する時間を理論的に計算し,噴霧速度の実測値から得られる凍結距離を計算した.そのデータを基に,アイスチャンバの大きさを設計する手法を得るとともに,試作したチャンバーがこの条件を満たしていることを確認した. 次に,硬度の異なる種々の材料,銅,アルミニウム,鉄,単結晶シリコン,塩化ビニールの板材に30degの角度でマイクロアイスを噴射した.マイクロアイスのモース硬度は3〜4であり,それよりも軟らかい塩化ビニールのみに深さ約10μmの加工痕が形成された.また表面粗さはマイクロアイスの衝突による圧痕によって0.16μmRtから2.87μmRtに増大した.一方,マイクロアイスとほぼ同程度の硬度を有する銅は明確な加工痕が観察されず,表面粗さのみ0.36μmRtから1.57μmRtに増大した.これに対し,マイクロアイスより硬い鉄,シリコンでは全く変化が見られず,選択的加工が実現されていることが確認された.またパターニング加工については最初に予定していた紫外線硬化樹脂を用いずに,メタルマスクを製作して用いた.その結果,樹脂製層間絶縁膜のパターン加工が可能であることを確認した.
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