研究概要 |
放電加工シミュレータの開発を行ない,目標とする工作物形状を得るために必要な工具電極形状や加工条件を自動的に決定できるシステムを構築した.つまり,放電面を放電痕と同じ程度の大きさのメッシュに分割し,各メッシュにはギャップ長と,メッシュ中の加工屑数をデータとして持たせる.そして,1回の放電ごとに,[放電点の決定]→[放電点における工具電極と工作物の除去]→[加工屑の発生と排出]→[工具電極の送り],なるルーチンを実行し,これを放電回数分だけ単純に繰り返す. 本研究では金型などの複雑曲面の加工に適応可能なシミュレータの開発を目的とし,次の成果を得た. 1.曲面への適用 曲面状工具電極の先端が徐々に工作物に対向し加工面積が増加していく過程がシミュレーションできるように,上記ルーチンの[放電点の決定]と,[工具電極の送り]のステップに修正を加えた.その結果,球面状の工具電極による加工がシミュレーションできた.さらに,加工前後の工作物形状から加工前の工具電極形状を予測する逆方向シミュレーションについても,曲面形状への適用が可能であることが確かめられた. 2.放電偏在と集中のシミュレーション 極間の加工屑濃度,ギャップ,温度の分布を考慮した放電位置のシミュレーションを行い,放電の偏在と集中の発生メカニズムについて考察した.その結果,加工屑の偏在が放電位置の偏在を生じさせる原因であるが,加工屑濃度分布を考慮しただけでは放電集中は生じず,電極表面温度分布を考慮して始めて放電集中がシミュレーションできることが分かった. 3.ワイヤ放電加工の加工精度シミュレーション ワイヤ放電加工では,放電点で発生する衝撃力や工作物とワイヤ電極間に働く静電力に起因したワイヤ振動とたわみが加工精度の低下をもたらす.そこで,形彫り放電加工のために開発した上記のシミュレーションプログラムにワイヤの振動解析を追加し,振動するワイヤと工作物との間隔がもっとも狭い箇所に放電が生じるようなワイヤ放電加工用のプログラムを新たに開発した.その結果,仕上げ面の板厚方向の真直度が実験結果と良い一致を見た.
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