研究概要 |
前年度にシリコンウェハ加工表面赤外エバネセント場計測のための基本光学系の設計および試作を行い,He-Neレーザによってプリズム表面に形成されるエバネセント場を検出する基礎実験を行った結果,エバネセント光の検出効率が当初の予想よりも悪いことが明らかになった. そのため,平成12年度は,再構築した赤外エバネセント場・解析シミュレータを利用して,シリコンウェハ表面層に存在する欠陥にによって形成される赤外エバネセント場および散乱場の特徴およびプローブによる検出特性を詳細に調べ,シリコンウェハ加工表面および表面層内部のナノメートルオーダの欠陥を検出するためのエバネセント光検出効率の向上技術について検討し,以下の研究成果を得た. 1.境界条件の設定に伴う計算誤差を低減する新たな境界条件の検討を行い,有限差分時間領域法FDTD(Finite Difference Time Domain method)法に基づいた赤外エバネセント場・解析シミュレータを高精度化するための再構築を行った.その結果,これまでノイズ成分に埋もれてしまっていた,ナノメートルサイズの欠陥によって乱された微弱な赤外エバネセント光の挙動を詳細に解析することが可能になった. 2.プローブの操作により得られた応答の検出波形を解析することで,欠陥の位置,存在形態(凹凸および表面か内部かなど)およびサイズを特定することが可能であることを明らかにした. 3.内部欠陥をプローブ走査によって検出する場合,P偏光入射させる照明条件下で,欠陥深さに応じた固有の検出波形が得られることがわかった. 4.検出効率を増大させる方法として,プローブについて検討した結果,YAGレーザ(波長1064nm)を光源とした場合,Siプローブよりも吸収の少ないSiO2プローブのほうが欠陥検出効率の向上に有利であることを明らかにした.
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