研究概要 |
分子線エピタキシ(molecular beam epitaxy,MBE)を応用した,分子の付着・整列現象にもとづく新しい加工原理による平滑面の創成技術によれば,単結晶Si基板上に単結晶炭化シリコン(SiC)平滑面の創成ができる.しかし,その創成メカニズムについては不明な点も多く,最適な加工条件の選択といった加工技術の確立には至っていない.本研究ではSiC平滑面の創成過程の観察ならびに加工条件と創成されるSiCの組成および幾何形状の関係を明らかにすることでSiC平滑面の創成メカニズムを解析し,最終的にはSic平滑面創成に対する最適な加工条件の選択指針を明確化することを目的とする.本年度は,まず,その創成過程のうち,成長の駆動エネルギ源となる基板温度がSiC成膜層の幾何形状,結晶性および組成に及ぼす影響を実験的に明らかにし,成長過程を解明する手がかりを得ている.基板温度を750〜1100℃まで50℃間隔で変化させた結果,800℃以上ではすべて単結晶となったが,750℃では多結晶のSicとなった.オージェ電子分光分析によるSiC成膜層の組成分析によれば,SiとCの組成比は,すべての基板温度においてCが50%以上とSiよりも多く,基板温度が高くなるにつれてCの割合は上昇し,Siの割合は下降した.原子間力顕微鏡によって表面幾何形状を観察した結果,エピタキシャル成長は主として核成長によっておきており,核の大きさが,基板温度が高くなるにつれて大きくなっていくのが観察された.さらに,成膜面には微小な三角形のピットが創成されており,基板温度が高くなるにつれてそれらの数と大きさが大きくなる傾向にあった.基板温度が変わることによっては,成膜層の組成,幾何形状,結晶性すべてが変化することが明らかとなった.
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