研究概要 |
マシニングセンタに代表される切削加工用工作機械では,主軸やテーブル駆動の高速化についてその技術開発が盛んに行われている.ここで問題となるのは,高速切削プロセスで使用される高圧かつ大量の切削液の使用後の廃棄処理である.廃液処理の問題を解決する有効な方法として,いわゆる極微量切削液供給による高速切削加工技術の開発が注目されている.本研究では,高速回転中に微量切削液と高圧空気を安定して加工点に供給するための新しい機構を提案することを目的としている.平成11年度は,主に高速回転中の主軸内における潤滑流体の挙動解析ならびに切削液ミスト供給部の機構検討を行った.また,解析結果を評価する為に,実験用高速主軸を製作し,評価実験を行った.平成12年度は,これに引き続いて,高速主軸内でミストが受ける遠心力の影響を軽減するために,特殊な構造の非回転ミスト供給機構を考案し,これを実際に高速主軸に装着してその性能を実験的に評価した。 まず,汎用数値解析ソフトを利用して,主軸回転速度や供給管路の形状と潤滑流体の挙動の関係を解析した.その結果にもとづいて,非回転構造を有するミスト供給装置を設計・製作し,これを高速主軸に組み込んで,高速回転中の切削液ミストの工具先端への供給特性について実験的に評価した.その結果は良好であったことから,次のステップとして,実用の高速穴あけ加工機の主軸にに開発した機構を組み込み,これを用いて切削加工実験を行った.その結果,切削液を全く使用しないドライ切削加工の場合に比較して,工具摩耗や切削点温度上昇が効果的に抑制され,本研究で考案した高速主軸用の微量切削液供給加工の有効性を示すことができた.また、微量切削液供給加工は,従来の切削液を大量に供給する湿式加工法に比較しても,工具寿命や加工面精度の点で遜色の無いことも確認することができた.
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