高輝度遠紫外レーザは次世代のリソグラフィー、光化学反応による物質のプロセッシングおよびレーザ核融合の分野での応用が期待されているが、その波長域で光を透過する材料が限定されること、その材料を高精度に加工する技術が確立していないこと並びにレーザ照射による光学素子の損傷が問題となっている。 本研究は、遠紫外の高輝度レーザに使用できる高精度・高透過率・高レーザ耐力・高信頼性を有する平面光学素子を提供することを目的とする。本年度の研究実績は以下のようである。 1.遠紫外並びに真空紫外域での光学結晶である高純度CaF_2をフロート・ポリシングした結果、最も滑らかな面として表面粗さ0.16nm rmsが得られたが、それ以上に滑らかな面は得られていない。この面を超高圧透過型電子顕微鏡で断面観察した結果、結晶面は(111)面から少し傾き、そのため原子単位で滑らかな(111)面の所々で段差ができ、それが表面粗さに反映していることが明らかとなった。したがって、表面粗さを0.1nm rms以下にするには結晶の正確な面出しが最も重要であることが判明した。 2.非線形光学結晶KDPとCLBOを用いてNd : YAGレーザを波長変換して波長266nmの遠紫外レーザを発生させ、これをCaF_2結晶内部に集光させて内部レーザ耐力を測定した結果、結晶材料間での性能は2倍異なることが明らかとなった。同じ個所に繰り返しレーザを照射した場合のレーザ耐力は単発のものに比べその値が1/2になる。 3.上記遠紫外レーザを超精密研磨したCaF_2表面に集光して表面でのレーザ耐力を測定した結果、表面粗さおよび加工変質層によるレーザ耐力の劣化だけでなく、加工後の表面洗浄法によるレーザ耐力の差が明瞭になった。
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