研究課題/領域番号 |
11450068
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研究機関 | 武蔵工業大学 |
研究代表者 |
染谷 常雄 武蔵工業大学, 工学部, 教授 (30010680)
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研究分担者 |
三原 雄司 武蔵工業大学, 工学部, 講師 (20287858)
瀧口 雅章 武蔵工業大学, 工学部, 助教授 (40188115)
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キーワード | 混合潤滑 / 薄膜センサ / 圧力測定 / 温度測定 / 往復動試験機 / マンガンの偏析 / センサの耐久性 / DLC膜 |
研究概要 |
本年度は昨年度保温装置及び油槽付きに改造した往復動試験機を用いて研究実施計画(2)の流体潤滑から混合潤滑に遷移する前後の圧力、温度計測を重点的に行った。また、流体潤滑の限界時の油膜圧力や温度を計測する薄膜型センサの改良および問題点を調査した。 1.往復動試験機によるしゅう動面の圧力、温度測定(実施計画(2)b.) 昨年度の研究実績に基づき、しゅう動面の表面粗さを0.4μmとして薄膜センサを形成し、計測に供試した。(1)圧力測定 ヘルツ接触圧力を68〜118MPa(計算値)と変えて混合潤滑下の油膜圧力の変化を測定した。この結果、計算で求めた接触圧力の2%程度しか油膜圧力値を計測できなかった。検討の結果、この計測誤差の主原因はしゅう動面上の圧力センサ感知部の大きさに対し、圧力が発生している接触面積が小さいためであることがわかった。また昨年度改良した窒化珪素を保護膜、絶縁膜材料としたセンサは、往復動試験機でのしゅう動面温度を常温から150度まで変化させた場合に、センサの耐久性が低下し、混合潤滑下の圧力を安定して測定できないことがわかった。このため、従来のアルミナ膜をセンサ材料として用いた場合のセンサの性能低下、特に温度感度の増大の原因を調べるために、2μmの酸化膜に挟まれた厚さ0.2μmの銅・マンガン・ニッケル合金に対して光電子分光解析(XPS、ESCA)による元素分布の調査を行った。この結果、圧力感知部の合金膜と、保護膜材料である酸化膜の界面にマンガンが偏析していることが判明した。また、偏析した部分のマンガンと銅マンガンニッケル合金内部のマンガンのケミカルシフトを調べた結果、圧力感知膜の内部と界面では、マンガンの結合エネルギーが異なるため、マンガンの偏析は酸化膜とマンガンとの酸化反応が起こっている可能性が高いことがわかった。(2)温度測定 しゅう動面温度を20〜80℃まで変化させ、接触圧力は118MPa(計算値)を与えた。20℃時では温度の変化は見られなかったが、80℃時には対向金属が通過した瞬間に約5℃の瞬間温度上昇の計測結果が得られた。 2.接触圧力の増加とセンサ膜破壊について 上記1.の計測を行うにあたり、センサの耐久性に個体差があり、安定した計測を継続できないため、下記の様にセンサの絶縁膜及び保護膜の強度向上の対策を優先した。(1)成膜方法の改良 従来のRFマグネトロンスパッタリングと、誘導結合プラズマ支援RFスパッタリングによる膜強度の変化を調べた。連続加重式の引っかき試験の結果、後者で製作した膜は前者の膜の10倍以上のせん断強度を持つことが確認でき、(1)の計測を行う場合、誘導結合プラズマ支援型は有効な成膜方法であることがわかった。(2)DLC膜の作製 カーボンターゲットを用い、スパッタリングガスとして水素を導入することで、アルミナよりも硬度が高いDLC膜の作製を試みた。現時点では、アルゴン60%水素40%の導入割合により、カーボン膜を絶縁膜とすることができた。せん断強度の計測結果は現状では低いが、水素ガスの導入割合を増加させることで、せん断強度及び絶縁特性が大きく変化することが判明した。
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