本研究の目的は、基礎的な乱流場である格子乱流を対象として、そこに分散する粒子群の挙動を実験的に明らかにし、粒子挙動の物理モデルを構築することにある。特に着目している点は、粒子数密度が比較的高い状態(体積比で0.1%程度以上)における粒子間相互作用である。すなわち、粒子群によって連続相に乱れが生成され、その影響を後続する粒子群が受ける機構である。本研究では、鉛直上昇流における粒子の中立浮遊状態を実現することによって、粒子群の平均的重力沈降をゼロにし、重力効果を最小にした状態で粒子そのものに起因する粒子間相互作用を明らかにすることを目指している。 本年度は4年計画の2年目として、前年度に設計製作した鉛直上昇格子乱流水槽の乱流特性をピトー管および粒子像流速計(PIV)を用いて測定した。その結果、格子とその上流に設置したメッシュとの組み合わせによって試験部で一様な平均速度分布が得られること、乱れ度分布も流れ方向の同一断面内ではほぼ一様になり、乱れ度の強度は下流方向に漸減することを明らかにした。文献値との比較検討により、本装置で標準的な格子乱流が実現されることを確認した。 次に、格子乱流中に直径1mmのガラス粒子を多数投入し、それらの挙動を高速度カメラで撮影して調べた。慎重な流量制御を行うことによって、壁面近傍を除く多くの粒子について中立浮遊状態を実現することができた。体積比がおよそ0.001〜0.01%の条件で粒子挙動を可視化・観察した結果、(1)2つの粒子が接近すると、片方の粒子が強くはじきだされること、(2)粒子体積比の増大とともに流れ方向に筋状の粒子分布が生じ、粒子数密度が高い領域では下降流、低い領域では上昇流となること、を明らかにした。後者の観察結果は粒子群挙動の直接数値計算による予測と符号するもので、初めて実験的に捉えることができた。
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