本年度は、強いせん断力により風波気液界面(波)が崩壊する際に気流側に放散される飛沫状の液滴が気液界面を通しての物質輸送にどの程度貢献するのかを明らかにするための実験の第一段階として、液滴のレイノルズ数と物質輸送に関するシャーウッド数との関係を室内実験により評価した。高さ2mの矩形ダクト内に純度99%の二酸化炭素を大気圧(1atm)で充てんさせ、上部から注射針を用いて純水液滴を自由落下させた。異なる内径の注射針を用いることにより液滴径を変化させて実験を行った。落下する液滴をハイスピードビデオカメラで撮影することにより液滴の径と速度を評価し、液滴が吸収した二酸化炭素量を有機全炭素濃度計を用いて測定した。得られた液滴の速度、液滴径、液滴の二酸化炭素濃度から、液滴のレイノルズ数とシャーウッド数を評価した。その結果、液滴のレイノルズ数とシャーウッド数の関係が明らかになり、液滴のレイノルズ数の増加に伴い、シャーウッド数が指数関数的に増加することがわかった。本年度の研究で得られたレイノルズ数とシャーウッド数の評価式を用いることにより、風波乱流場で発生する液滴の飛散速度と液滴径分布を測定すれば、気流側に放散される液滴が気液界面を通しての物質輸送機構にどの程度貢献するのかを明らかにすることが可能である。そこで、来年度は、実際に風波乱流場で波が崩壊する場合に気流側に放散される液滴の飛散速度と液滴径分布を粒子画像流速計(PIV)および位相ドップラ流速計(PDA)を用いた測定により明らかにし、液滴が気液界面を通しての物質移動にどの程度貢献するのかを総合的に評価する予定である。
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