研究概要 |
本研究は、低温場において薄膜を高速加熱したときの高速温度応答を測定することにより非フーリエ熱伝導現象を観察し、熱緩和時間と熱拡散率を同時に測定しようとするものである。 本年度はまず、光反射法の基礎データとして必要な物質の反射率の温度依存性を室温から低温まで測定するため、クライオスタト中の真空度を10^<-7>に改造した。レーザーエリプソメーターにより、金属(Cu,Fe,Al,Au)、合金(SUS304)、シリコンのHe-Neレーザー(波長λ=632.8nm)における反射率の測定を行い、200K〜400Kにおける反射率の温度依存性を得た。その結果1Kあたりの反射率の変化量が10^<-4>程度と非常に小さい値が得られた。 SUS304薄膜単体試料測定の結果、前年度の結果と同様に温度応答と思われる応答が得られた。しかし、これらの結果は再現性が非常に悪く、温度応答測定の際に測定結果に影響した周期的な大きなノイズも見られた。ノイズの周波数の分析やひずみゲージを用いた測定を行ったところ、試料の熱変形の影響があることが判明した。また本研究での測定結果は、光反射法の原理に基づいて得られた温度応答ではなく、レーザー加熱による試料の熱変形により得られたものである。 光反射法により基板上に成膜した薄膜試料の温度応答測定を試みたが、反射率変化が非常に小さく、本研究で用いたシステムでは温度応答は得られなかった。
|