研究概要 |
本研究は,極低温場において薄膜をレーザにより高速加熱したときの温度応答を高速度で測定することにより非フーリエ熱伝導現象を観察し、熱緩和時間と熱拡散率を同時に測定しようとするものである。研究成果を要約すると次のようになる。 1.光反射法の基礎データとして必要な物質の反射率の温度依存性を室温から低温まで測定するため、クライオスタットを改造し、レーザエリプソメータにより純金属(Cu, Fe, Al, Au)、シリコン単結晶、合金(SUS304)に対して反射率の測定を行い、200〜400Kにおける反射率の温度依存性を得た。その結果、1Kあたりの変化量が10^<-4>程度と非常に小さい値であることがわかった。 2.反射率の温度による変化を利用した高速温度応答測定システムを構築し、極低温領域まで測定できるようになった。このシステムを用いてステンレス鋼(SUS304)薄膜の熱拡散率を10Kから300Kまで測定し、妥当な値が得られた。しかし、この温度応答は、ノイズの周波数分析やひずみゲージを用いた測定を解析した結果、レーザ加熱による試料の熱変形により得られたものであり、光反射法に基づく温度応答でないことが判明した。 3.石英ガラス基板上にスパッタリング法により成膜した薄膜試料を用いて温度応答の測定を試みた。しかし、反射率の温度よる変化が極めて小さく、温度応答を確実なものとしてとらえる事はできなかった。この場合、重ね打ち法など温度応答信号を拡大してとりだす工夫を種々試みたが、良好なデータは得られなかった。 4.今後の対策として、測定感度を高めることが必要である。この場合、単に増幅器の増幅率を高めるばかりでなく、周期的加熱による位相差を利用するなど抜本的な検討も必要である。
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