研究概要 |
本研究は近年開発されたエネルギ吸収能の高い制振材料や制振合金を積極的に活用して,運搬機械,発電用大型ボイラ,長スパン配管系さらには各種橋型構造物などに適用できる大変位抑制型の高減衰ダンパの開発を目的としている. 研究は次のステップで計画・実行される. (1)国内外のダンパ開発の動向を調査し,本研究で開発するダンパの優位性を明らかにする. (2)制振性に優れた材料を選択し,それらのエネルギ吸収能を把握する.特に大振幅加力試験を行って,強度と吸振性が維持できる条件を明確にする. (3)変位抑制型のダンパを試作し,性能試験を行う. (4)試作ダンパを,橋型構造または配管模型に設置して振動試験を実施して,制振効果を確認する. 本研究は研究着手の第一年度であり,上記のうち(1)と(2)を実行した.現在までの成果の概要は以下の通りである. (1)能動型や準能動型を含む,ダンパや制振装置にかかわる研究の動向を日本と米国を中心に精細に調査し,特徴と問題点を明らかにした.その成果を国際会議で発表した. (2)大変位振幅振動の抑制に対応可能な制振合金として,超塑性合金(SPZ)と超弾性合金としての形状記憶合金(SMA)を選択し,温度環境の変動も考慮して,それらの振動エネルギ吸収能を加振試験によって調べた.その結果,現段階ではSMAのうち,Ti-Ni系の合金が制振能に優れていることが明らかになった. 本年度は,トルコ,台湾などで大地震が発生し,大変位により破壊・損傷した構造物が多かった.研究代表者はこれらの地震の被害調査も行い,本研究の意義をさらに高めることを目指し,ステップ(3)以降の具体的計画を立案しつつある.
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