研究概要 |
本年度は,二種類の分散系ER流体を取り上げ,0.1mm程度のマイクロギャップをもつ回転せん断流れとスクイーズ流れの二種の流れモードにおけるマイクロ流動特性を可視化観察によって明らかにし,それぞれのER特性との関連性について検討し,マイクロシステムに適した分散系ER流体とその応用に際しての設計指針を与えた. さらに,マイクロシステムの一例として,分散系ER流体を作動媒体とする2つのERバルブとダイアフラム駆動部からなるマイクロアクチュエータをフォトリソグラフィ法によって構築し,オープンループ制御及びPID位置フィードバック制御を適用した場合のダイアフラムの応答特性からその性能評価を行った.構築したマイクロアクチュエータは電極間隔約100μm,流路幅2mmの微細なERバルブを二つ有し,その間にダイアフラム駆動部があり,PWM制御された二つのERバルブによってダイアフラム室への流量を連続的に制御してダイアフラムが駆動される.オープンループ制御実験においては,ERバルブ間のオーバーラップ量の適用により位相特性が改善されるという結果を得ている.PID位置フィードバック制御実験においては,ダイアフラムの目標変位振幅が小さいほど良好なゲイン及び位相特性をもつ周波数特性が得られることを実験的に示した.さらに,今回のマイクロ化に伴って生じる諸問題を明らかにし,アクチュエータの駆動原理や種々の制御パラメータの影響について検討することによって,マイクロアクチュエータの性能向上の可能性を提示できた. また,PVDFの圧電フィルムをダイアフラムの駆動源として用いた分散系ER流体用ダイアフラム型マイクロポンプの開発を実施した.円形ユニモルフ型圧電フィルムからなるダイアフラムの印加電圧に対する変形解析を行い吐出流量について検討するとともに,実際に直径10mmの圧電ダイアフラムポンプを製作しそのポンピング性能を評価した.圧電ダイアフラムは印加電圧に比例して変形し,ダイアフラムの変形体積に相当する吐出流量も印加電圧に比例して増加することを解析的に示した.また,試作した圧電ポンプでは,ダイアフラム室への流入側ERバルブと流出側ERバルブを交互にON-OFFするが,その信号の圧電ダイアフラム駆動電圧信号に対する位相φと信号周波数fを適切に調節(φ=60deg,f=10Hz)することによって,最大流量(Q=24μl/min),最大吐出圧力約19mmH^2Oが得られることを明らかにした.
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