研究概要 |
昆虫の感覚毛を規範としたマイクロ気流センサを製作した.シリコン基板を異方性エッチングなどを用いて加工し,厚さ10μmの十字型両持ち梁を製作した.その十字型梁の4個の固定端に,ボロンイオンの拡散などを利用してひずみゲージを製作した.さらにワイヤボンダ技術を利用して,十字型梁の中心に直径30μmの金線を垂直に接合した.これにより,金線が気流から力を受けると十字型梁がひずみ,その量をひずみゲージで電圧に変換するような気流センサを実現した。4個のひずみゲージの特性(ゲージ率など)に大きなばらつきが生じ,歩留まりや再現性が悪く,設計通りの動作をするセンサを実現するのは非常に困難であった.これは,製作プロセスにおける不純物拡散工程に何か問題があると考えられ,次年度の大きな課題である. 製作したマイクロ気流センサの特性を計測した.センサを風洞内に設置し,0〜2m/sの気流を与えて出力電圧を測定した.これにより,気流速度と出力電圧との間に線形性があることがわかった.また,様々な方向から気流を与えて出力電圧を計測することにより,製作したセンサが流速の大きさだけでなく,気流の方向をも計測できることを確認した. また,感覚毛に相当する金線周りに関して流体力学的な理論を展開することにより,感覚毛の長さを変えることによってどのようにセンサの特性が変化するのかということを論じた.これにより,長さの異なる多数の感覚毛を配列することにより,気流情報を効果的に獲得するシステムが構築できることを示した.
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