研究概要 |
昆虫の感覚毛を規範としたマイクロ気流センサを製作し,その特性を向上させるために製作プロセスの最適化を行った.この気流センサは,1本の毛状構造体(直径30μm,長さ1〜3mm,材質は金)と,この基部を支える十字型の梁構造体(1本の梁の長さ3mm,幅230μm,厚さ10μm,材質は単結晶シリコン)から構成される.十字型梁の4個の固定端部には半導体ひずみゲージが作り込まれている.毛状構造体が気流から力を受けると十字型梁が変形し,その変形量をひずみゲージで検出することにより,気流速度を知ることができる.このセンサの感度や分解能を決定する要因は,毛状構造体や十字型梁の幾何学形状と,ひずみゲージの感度(ゲージ率)などであった.特に,再現性よくゲージ率の高いひずみゲージを実現するために,ゲージ部の寸法や保護の仕方,金属配線部とのコンタクト窓の面積,金属配線後の熱処理の温度や時間など,様々なパラメータを変更することにより最適な製作条件を導出した.その結果,ゲージ率45程度の半導体ひずみゲージを再現性よく,かつ歩留まりよく実現することに成功した.これにより,前年度課題として挙げたセンサの製作上の問題点を克服した. この気流センサを流体制御に応用するための基礎的な実験として,多数のフラップ型電磁アクチュエータ(寸法2.5mm×5mm)と熱線流速センサ(直径10μm,長さ1.8mm,材質はタングステン)を製作した.これらを直径9cmの円柱面上に配置し,風洞内で実験を行うことにより,円柱に働く効力を16%以上低減させることができた.この実験では,気流センサとして熱線流速センサを用いたが,これを感覚毛型センサに置き換えることにより,同等以上の効果が期待できる.
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