本研究は、土砂崩れなどの災害現場において生き埋めになった被災者の救出作業機能を従来の油圧パワーショベルに付加することを目的としているため、i)力制御しながら土砂・瓦礫などを撤去できる油圧ショベル先端のマスター・スレーブ制御系の構築、ii)i)の作業に時間を要する場合に備えた、瓦礫内部に直接延命用の飲料水を搬送できる「能動ホース」の開発、これら2本を柱に本年度の研究を遂行してきた。その結果、以下のような研究実績を修めることができた。 i)においては、従来までのマスター・スレーブ制御系とは異なり、オペレータとスレーブ、マスターと土砂・瓦礫等の対象物、これらそれぞれのインピーダンスマッチングを行うことにより、マスター・スレーブの機械系に内在するインピーダンスに影響を受けにくい繊細な感覚を伝達することが可能なシステムを新たに導入した。この概念をもとに、マスターロボットの動作シミュレーションおよびスレーブロボットの機械モデルを用いた実験を行い、期待通りの結果を得ることができた。 またii)においては、空圧エネルギーを用いて「象の鼻」のように柔軟かつ大きな屈曲力を生成できるアクチュエータの試作を行った。瓦礫内部の走行をスムーズに行うため多自由度に屈曲するものであり、その実現のために一本のホースは複数の分節にユニット化することにし、2自由度の動きが可能な1つのユニット内部に3個の空圧バルブを納め、直径80mm、長さ400mmの実戦的な機械構造を構成できた。また、空圧バルブの開閉制御を行うことにより1ユニットの屈曲制御も実現することができた。
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