研究概要 |
本研究では,微小化に適したマイクロマニピュレータとして形状記憶樹脂を用いた膨膜形マイクロマニピュレータを提案し,製作工程の確立と変形・動作特性の解明により膨膜形マイクロマニピュレータを開発することを目的とする. これまで,マニピュレータ本体の管構造の製作は,射出成形により試作を行っていたが,さらなる微小化を目指し一液硬化の形状記憶樹脂を用いてディップ法による製作を試みた.液状樹脂に浸漬したテフロン棒(φ2,1,0.5mm)を一定速度で引上げ,このとき棒の周りに着いた樹脂を硬化さた後に,テフロン棒を引き抜くことにより管形状を製作した.このときの樹脂の粘度や引上げ速度の違いから,肉厚と樹脂の偏り方を明らかにした.それぞれの内径に対して長さ100mmの管を製作することが可能となった.樹脂を加熱するためのヒータ部は,ニクロム(1mm×1mm×20μm)に,径20μmの銅線を導電性接着剤で固定することで試作し,感温塗料を用いた実験により電流と温度の関係を明らかにした.このマイクロヒータを管構造に樹脂で貼付けることにより,膨膜マイクロマニピュレータを試作した.有限要素法により,内圧と変形の関係を解析により求めた.これより,曲げ動作を行うためには,膜厚は大きいほうが有利であることを明らかにした.試作したマニピュレータに内圧を負荷して駆動実験を行った.駆動途中ある程度変形(10゜程度の角度変位)した後に,ヒータ取付端部の膜厚が急激に減少し破裂した.これは,ヒータの剛性が大きいため負荷により取付端部で応力集中が生じ,この部分の樹脂に大きな歪が生じたことが原因である.今後ヒータとして,剛性が樹脂と同じ程度の導電ゴムの利用,または管構造を製作する段階で,樹脂が硬化する前に部分的に金属粉末を混入し,こめ部分に高抵抗の導電性を持たせることでヒータとすることを計画している.
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