研究分担者 |
中尾 政之 東京大学, 工学系研究科, 助教授 (90242007)
加畑 博幸 京都大学, 工学研究科, 助手 (70293884)
小寺 秀俊 京都大学, 工学研究科, 教授 (20252471)
畑村 洋太郎 東京大学, 工学系研究科, 教授 (40010863)
松本 潔 東京大学, 工学系研究科, 助手 (10282675)
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研究概要 |
基板の微細構造を創成するマイクロマシーニングの手法と工具の物理的マニピュレーションの手法を組み合わせることにより,染色体を展延してその構造や特定の遺伝子のDNA上での位置を解析し,さらに任意の位置での遺伝子の切除・改変を行う技術(染色体のマイクロサージェリー)を開発することを目的として研究を行った。 3年計画の2年度にあたる本年度の研究では,流路内で薬剤を添加して染色体の巻きほどきを行う際,液置換による染色体の破断・流失が問題になることに注目し,流体力学的シヤーを生ぜずに液置換を行うマイクロデバイス-染色体マイクロ手術台-を開発した。すなわち,試薬を流すための流路と染色体を固定するためのチャンバーとの間に支持構造により支持されたフィルターを置き,このフィルターを通して液の流れまたは拡散により染色体に薬剤を供給するデバイスである。これを用いて,染色体の弛緩がリアルタイムで制御できることを示すとともに,弛緩された染色体の一端をレーザーマニピュレーションによって駆動されるマイクロプローブで引っ張り,染色体からDNAを最長200ミクロン程度まきほどくことに成功した。これと並行して,原子間力顕微鏡のカンチレバーの上にEBD(Electron Beam Deposition)を用いて成長させたナノワイヤーフレームを用い,染色体の一部を引き出すことができること,および近接場光学顕微鏡のプローブとして用いることができることを示した。 これらにより,ある程度の染色体の展延が示せたが,1)薬剤により染色体全体が構造を保つことができなくなり,引き出している部位がもとの染色体形態のどの部分に相当するかがわからなくなってしまう,2)多量のDNAがほぐれてくると観察時のバックグラウンドとなり,今注目している部位の観察ができなくなってしまう,などの問題点があることが判明した。そこで,来年度は,レーザーを用いて染色体を局所的に加熱し,この部分のみを巻きほどく手法の開発を行う予定である。
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