研究概要 |
基板の微細構造を創成するマイクロマシーニングの手法と工具の物理的マニピュレーションの手法を組み合わせることにより,染色体を展延してその構造や特定の遺伝子のDNA上での位置を解析し,さらに任意の位置での遺伝子の切除・改変を行う技術(染色体のマイクロサージェリー)を開発することを目的として研究を行った。 昨年度の研究で,高等生物の染色体全体をそのまま分解すると,全長数cmにわたるDNAがすべて放出され,1分子レベルでの観察が困難になることが判明したので,本年度は,染色体の1部分のみを展開する方法として,レーザー局所加熱により熱的に染色体を分解する手法,および至適温度が90度付近にあるタンパク分解酵素を添加して酵素的に分解する手法を開発した。また,酵母細胞を対象とし,1つの細胞の中にある全DNAをパッケージとして扱う手法として,細胞骨格を架橋した籠状構造の中にDNAを閉じ込める手法を開発した。そして,この構造内に閉じ込められたDNAを対象とし,FISH (Fluorescence In Situ Hybridization)により標的遺伝子を標識し,その後に籠構造を破壊して,電気浸透流によりDNAを直線状に引き伸ばす手法を開発し,この手法によるFISHシグナルを確認した。このように展開されたDNAに染色体を構成するタンパク(ヒストン)を添加すると,巻き取られて凝集した構造を回復する様子が観察された。また,これと並行して,微小針の上にEBD (Electron Beam Deposition)を用いて成長させたナノワイヤーフレームを用い,撥水性処理をしたガラス基板の上のDNAの任意位置を切り出すオンチップDNAハンドリングシステムの開発を行い,実際に指定位置が切り出せることを示した。
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