研究概要 |
本年度は,人間-ロボット間の物理的インタラクションを衝突と接触の2局面に大別し,各項目についての研究を行った.また,これまでに開発してきた人間共存ロボットのシステム統合・評価を行うことで,最終的な目標である衝突・接触安全技術の体系化を試みた.以下に各項目の内容を示す. 1.衝突・接触安全制御 衝突安全性に関しては,これまでハードウェア・アクチュエータレベルでの対策を提案してきたが,本年度は更に関節レベルと全身レベルでの安全制御系を構築した.このうち前者は,受動柔軟関節において衝撃などの外乱が加わった際にも作業に必要な位置精度を維持可能な耐負荷変動制御系である.また後者は,移動機構が急加減速した際に全身でバランスを維持する動的転倒安定制御系である.一方,接触安全性に関しては,人間-ロボット間の接触状態,環境状況,および作業内容を表すパラメータ群からロボットの動作決定を行う内部モデルを考案した.この内部モデルは,人間-ロボット間の様々な物理的インタラクションに必要となる技術課題を包括している. 2.システム統合・評価 これまでの研究成果にもとづいてWENDYシステムの統合化を行った.WENDYシステムは,受動柔軟関節を含む80以上のアクチュエータ群と100以上のセンサ群から構成される身体,および衝突・接触安全性確保のための各種力触覚センサ内蔵型の緩衝カバーを備えている.また開発したシステムに対して,実験とシミュレーションによる評価を行った.このとき,受動柔軟関節において位置精度と緩衝機能を両立する,衝突回避のために移動ロボットが緊急停止する,湯のみを姿勢制御しながら運搬移動している時に人間と接触するなど,実用的かつ難易度が高い作業状況を想定し,安全性を衝突・接触の観点で評価した.以上の結果,本研究が人間共存ロボットの衝突・接触安全動作生成に関して有効であることが確認できた.
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