研究概要 |
本研究は,我々が提案している金属基板SOIデバイス技術を,アナログ/デジタル融合集積回路に適用し高精度高速集積回路を実現するものである。 超高速な信号を精度良く伝播させるための最適配線構造の解析を,Maxwellの方程式に基づく厳密な電磁界シミュレーションにより実施した。一般的なシリコン基板構造では,シリコン基板中に浸透する電磁界によるロスのため信号が著しく劣化するが,抵抗の十分低い金属基板構造にすると減衰・位相遅れが抑えられ,100ps程度のパルス信号が2mm程度伝播可能であることが分かった。しかし,金属配線の配線寸法が,信号周波数で決まる表皮深さより小さくなる領域では,配線抵抗による減衰が生じ,信号伝播特性が劣化することが分かった。層間絶縁膜を従来のシリコン酸化膜から気体(He等)にすることにより効果的に信号減衰を防止できることが分かった。高精度・高速信号配線構造として,金属基板・気体絶縁配線構造が最適であることが理論的に実証された。 さらに,高精度SOI MOSアナログ回路動作に影響を与える雑音特性について検討した。二種類の製法,すなわち水素イオン注入による手法とエピタキシャル成長による手法による張り合わせSOIウェハを用いてSOI MOSトランジスタのノイズ特性を評価した。前者では,ドレイン空乏層中の生成・再結合中心の存在により雑音が増大するが,後者では,純粋な1/f雑音しか観察されず,良好な特性が得られた。高精度アナログ回路応用には,雑音特性に優れたエピタキシャル成長法によるSOIウェハを使用することが重要であることが明らかになった。 また,高速動作のための金属ゲートMOSトランジスタ構造を作成する製造プロセスを開発した。高密度プラズマスパッタ法によるTaNx/Ta/TaNx構造により信頼性の高い金属ゲート電極構造が形成できることが実証された。
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