(1)本研究の目標は、量子ドットのサブバンド間遷移を用いたテラヘルツ発振器を実現することである。昨年度の研究においては、MBE法によって作製したGaAs基板上InAs量子ドットからのテラヘルツ発光を観測することに成功した。しかしながら、ドットの作製条件に関しては詳しく検討されておらず、発光特性の最適化はなされていなかった。 (2)本年度はMBE法およびOMVPE法という2つの代表的成長手法を用いて量子ドットを作製し、各方法によってどのような形状・特性を持つドットが形成されるのかを解明し、最適な成長法を明らかにすることを目標に研究を行った。 (3)構造観察の結果、成長面内の形状においてOMVPE量子ドットは[110]方向に、MBEドットは[1-10]方向に長い異方性を持つことが分かった。また、これらの形状異方性は一般的な成長条件において観測される成長方法特有の成長速度異方性と等しいことも明らかになった。 (4)形状の均一性に関しては、MBEドットでは全ての大きさのドットが[1-10]方向に長い形状であるのに対して、OMVPEドットでは大きさによって形状異方性が異なることが分かった。 (5)発光特性に関しては、バンド間発光の偏光PL測定によって、光学特性を支配するドットの形状を調べた。その結果、MBE法においては[1-10]に長いドットが、OMVPE法においては[110]方向に長いドットが光学特性を支配していることが明らかになった。 (6)これらの研究の結果、テラヘルツ発光材料として考えた場合、寸法分布が比較的小さく形状についても均一性の高いMBEドットが有利であることが明らかになった。次年度は最適化されたドット形状を用いてサブバンド間発光スペクトルの分光測定を行い、さらにカスケード的な電流注入による発光効率の増大などを試みる予定である。
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