研究課題/領域番号 |
11450123
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野田 進 京都大学, 工学研究科, 教授 (10208358)
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研究分担者 |
浅野 卓 京都大学, 工学研究科, 助手 (30332729)
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キーワード | 積層量子ドット / サブバンド間遷移 / THz発光 / モンテカルロシミュレーション / キャリア緩和ダイナミクス |
研究概要 |
本年度は、これまでの2年間の研究成果を受けて、新たにカスケード的キャリア注入方式を導入することによる量子ドットからのTHz発光効率の増大を試みた。 (1)まず従来の電子正孔対の注入によるTHz発光の効率を詳細に測定した。n型GaAs基板上に、2MLのInAs供給して作製した量子ドットをi層とし、これをP型GaAsでカバーしたpin発光ダイオードを作製した。p電極はメッシュ構造とし、サブバンド間光の取り出しを可能にした。THz発光の検出にはGe : Beディテクタを用い、発光強度と注入電流の関係を詳細に測定した。測定は、熱輻射の影響を避けるため、試料を30Kまで冷却した上で行った。 (2)電子正孔対の注入によるTHz発光の強度は注入電流が120mA程度までは単調に増加するものの、120mAを超えると飽和傾向が見られた。この飽和注入電流は単位時間当たりのキャリア密度に換算すると7.4×10^<19>cm^<-2>s^<-1>となり、モンテカルロ法を用いたシミュレーションの結果と定量的にも非常によい一致を示した。また、この飽和の原因は量子ドットの下準位に電子が蓄積されることが原因と判明した。 (3)つぎに発光効率を増大させるため、積層量子ドットを利用して量子ドットにカスケード的に電子のみを注入することを検討した。電子のトンネリングが可能な近距離にドットが積層されて列をなしている構造を想定し、1つの電子がカスケード状にドット列内を流れていく際に、各ドットにおいてTHz電磁波を放射するデバイスにおけるキャリア緩和ダイナミクスをモンテカルロシミュレーションを用いて検討した。 (4)その結果、電子正孔対による注入方式と比較して、5倍程度の発光効率の増強が可能であることがわかった。また、電子正孔対注入方式では不可能であった、反転分布の形成も可能であることが判明し、誘導放出型デバイスによる更なる効率の改善も期待できることがわかった。
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