もとより酸化物材料は一般半導体材料には属さない各種の機能を保有しているために、これまでに多方面への応用がなされてきた。近年の半導体技術の成長に引きずられるように酸化物エレクトロニクスの世界にも高機能化の風が吹き始め、追い風の中で本研究が進められてきた。 酸化物にキャリヤーをドープすることができれば酸化物半導体として新しい土俵が築けるであろう。実際には結晶性が悪いために、この希望は中々叶えられることがなかった。本研究ではPINダイオード構造を作製しながら、素子特性の評価を介して問題の抽出と解決を図った。格子欠陥によるトラップ密度を昨年度10E19/cm3であったものを本年度は10E17/cm3以下に低減することに成功した。PINダイオードの整流特性も大幅に改善できた。 i-層を強誘電体BaTiO3とするダイオードの格子分極下・電子注入の基礎研究を進めたところ、約10E20/cm3程度の過剰キャリヤー注入の下でも分極電荷が保持されていることが判明した。さらに、室温励起子発光の出来るZnO層をi-層に用いたPIN素子の試作にかかり、深い準位の発光を完全に抑制したZnO薄膜のヘテロ成長に成功して準備を整えた。
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