研究概要 |
Cu配線/低誘電率層間絶縁膜を用いた次世代多層配線技術において、動作中にCuイオンが銅配線から層間絶縁膜へ電界によって拡散移動し、信頼性劣化を起こすことが懸念されている。この問題を解決するためには、低誘電率層間絶縁膜中のCuイオンの電界ドリフトを精密に測定する方法を確立し、Cuイオンの電界ドリフトメカニズムを明らかにする必要がある。本研究ではCuイオンの電界ドリフト精密に測定する方法について検討した。 低誘電率層間絶縁膜中のCuイオンの電界ドリフト特性はCu/Low-K/SiO2/Siなる構造をもつMISキャパシタで測定する。被測定低誘電率膜としてメチルシラザン(Methylsilazane:MSZ)およびポーラス化メチルシラザンを用いる。Cuイオンドリフト測定はバイアス温度試験法(Bias-Temperature Stress:BTS)および容量-電圧(Capacitance-Voltage:CV)測定で行い、Cuイオンドリフト率はフラットバンド電圧のシフト量から求める。 BTS条件は温度200℃,電界強度0.43MV/cm,バイアス時間30分である。MSZに対してはこのBTS条件のもとでフラットバンド電圧のシフトが4.9V、アキュミュレーション容量値から比誘電率2.71が得られた。ポーラスMSZはフラットバンド電圧のシフトが1.60V、比誘電率が1.90である。対応する銅イオンドリフト率はMSZで10^8個/cm2 secのオーダーであるのに対しポーラス化MSZは10^7個/cm2 secのオーダーであり、MSZはポーラス化することでCuイオンドリフト抑制効果が増すことがわかった。 結論として、低誘電率膜中のCuイオンドリフト率を定量的に測定する方法を実験的、理論的に確立・整備し、メチルシラザンMSZおよびポーラス化MSZのCuイオンドリフトを測定した。ポーラス化MSZはMSZよりCuイオンドリフトとリーク電流を抑制する効果があり、その抑制機構がわかった。
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